
11月13日、本作『佐藤さんと佐藤さん』の一般試写会とトークイベントが都内で開催され、天野千尋監督と映画ソムリエの東紗友美、映画・音楽パーソナリティーの奥浜レイラが登壇した。
東が鑑賞直後の率直な感想について「見終わったあと、心にあざが残るような映画でした。夫婦の喧嘩の場面も、ただの言い合いじゃなくて、“ああ、これあるある…”と胸の奥を突かれる瞬間ばかり。トイレットペーパーの“ないよ”の言い方ひとつで空気が変わるシーンとか、そういう細部のリアルさがすごく刺さる。たぶん誰にでも思い当たる節がある」と、SNSでも話題となった場面を挙げながら語った。奥浜も「距離が近い関係ほど“言ってはいけない一言”が分かってしまう。二人が積み重ねてきた年月の蓄積が2時間の中でしっかり表れていました」と、作品の人間描写に深く共感した。
さらに天野監督自身の経験に基づいて作品を制作されたそうで「出産を機に一度仕事から離れ、家事育児を担う期間は社会から取り残されたような孤独感があった」と述べる。その後、映画の現場に復帰した際には、今度は監督自身が外で長時間働く立場になり、家を任せた夫が、かつての自分と同じように “外で自由に働いていていいな” と羨ましそうに、少し恨めしそうな目で見ていたことに気づいたという。この体験が「立場が変われば感じ方もまったく変わる」という作品テーマの着想につながったと明かした。
また作品タイトルにも関わる“名字”の設定について、天野監督は「名字が変わることは、アイデンティティが揺らぐ経験でもある。佐藤さんと佐藤さんという同じ姓にしたことで、性別や役割ではなく、まずは二人をフラットに見られる関係性として描けると思った」と語った。